日本では昔、長男が一家の財産をすべて相続すると規定した「家督制度」がありました。
この制度は現在廃止されてはいるものの、遺産相続においては、現在も長男の権利が優先されるのでしょうか。
そこで今回は、遺産相続では長男が優先されるのかどうかについて解説します。
相続の正しい知識を把握して、トラブルなく遺産を分割できるようになりましょう。
□遺産相続では長男が優先される?
一家の財産は、家督を引き継ぐ長男が相続すると定めていた制度は、旧民法下での話です。
この制度は現在の民法によって廃止されています。
そのため現在では、相続する遺産は兄弟間で均等に分割することが原則になっています。
分配方法については、被相続人に配偶者と子供がいた場合、配偶者が半分、子供が半分ずつ遺産を相続します。
その際、子ども分の遺産については、基本的に人数で均等に分割することが一般的です。
このような配分方法のことを「法定相続分」といい、基本的には法定相続分による分け方で遺産は分割されます。
ただし、この配分方法はあくまで目安であるため、被相続人が遺言書で相続人を指定していたり、相続人間の話し合いで合意が得られたりした場合は、特定の人物のみが優先して遺産を相続することもできます。
そこで次の項では、相続で長男が優先されるケースについて詳しく見ていきましょう。

□相続で長男が優先されるケースとは?
*相続人が長男しかいない
もし相続人の対象に該当する人が、被相続人の長男しかいない場合、当然ですが長男に当たる方が遺産を独占できます。
この場合には、遺言書の指定も遺産分割協議も関係ないため、余計な手続きも必要なく長男の権利が優先されます。
*被相続人が遺言書で指定していた
被相続人の作った遺言書が残っており、その内容に長男に遺産をすべて相続させる旨が記載されている場合には、長男が遺産を独り占めできます。
遺産はもともと被相続人のものであり、遺言書はその被相続人が作ったものであるため、遺言書での指定があれば、その内容が優先されて遺産は分割されます。
ただし、この場合には「遺留分」に注意しなければいけません。
遺留分とは、法定相続人が受け取る権利を持つ、「最低限の遺産の取り分」のことです。
遺留分を持つ相続人は、長男に遺留分を渡してもらうための「遺留分減殺請求」が可能で、それに応じて長男は遺産を渡さなければいけないのです。
*相続人全員で遺産分割協議をした
遺産分割協議で相続人全員が合意した場合にも、長男が遺産をすべて受け継ぐことが可能です。
遺産分割協議とは、遺産相続分割について相続人たちで決める話し合いのことで、この話し合いで長男の優先に合意が得られれば、長男のみで遺産を独占することもできます。
ただし、相続人の中で1人でも反対する人がいれば、遺産を独り占めすることは不可能なので、しっかり話し合って不満の出ない分割を心がけましょう。

□まとめ
長男が遺産を独占できると決められていたのは、旧民法下での話であり、現在は兄弟間で平等に遺産を相続する「法定相続分」の分け方が一般的になっています。
ただし、この分け方はあくまで目安であり、遺言書や遺産分割協議の内容によっては、長男が優先して遺産を引き継ぐ場合があることも、頭に入れておきましょう。