「自分に万が一のことがあったら、自分の遺産を引き継いでほしい」
このような約束が、故人の生前に存在した場合には、口約束による相続が有効になるのでしょうか。
本記事では、口約束が相続において有効なのかどうかと、有効にするためのポイントについて解説していきます。
□口約束による相続は有効?それとも無効?
まずは、口約束による遺産相続が有効なのか無効なのか、また口約束の法的効力について解説します。
*口約束での遺産相続は原則有効
原則として、口約束による遺産相続は有効です。
故人が亡くなる前に「私が亡くなったら、あなたに遺産をあげる」と相手に伝えていて、それを受け取る側が承諾さえしていれば、口約束でも契約が成立します。
ただし、口約束での遺産相続では、その有効性を示すための「証明」が必要になるのです。
*口約束での遺産相続には証明が必要
遺産相続の契約が成立していても、相続人は口約束の存在を証明しなければなりません。
証拠がない場合は、法定相続人が財産を引き継ぐことになるため、相続において口約束を有効にするためには、口約束があったことの証明が重要です。
全ての相続人が口約束を知っており、納得している場合は問題ありませんが、そうでない場合は、口約束が本当にあったのかどうかで、トラブルになる可能性があります。
そのため、口約束があったことを正式に示すための「証拠」を残すことが重要なのです。
*口約束での契約の法的な効力
また、口約束による契約は、法的な効力を有しています。
これは民法によるもので、契約の成立は次のように規定されています。
『民法第522条(契約の成立と方式)
1.契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2.契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。』
「書面による契約」と「口約束による契約」は、原則として法的な効力に変わりがありません。
そのため、口約束で遺産相続の約束をしたケースも、法的には有効になるわけです。

□口約束による相続を有効にするための方法
1.生前に遺言書を作成しておく
先程もお伝えしたように、口約束による相続は原則有効ではありますが、口約束だけを証拠として主張するのは、相続人同士のトラブルに繋がりかねません。
そのため、できれば遺言書として、約束の内容を残しておくことが望ましいでしょう。
遺言書があれば、相続人以外の第三者に遺産を譲ることもでき、相続人の同意は必要ありません。
2.生前に死因贈与契約を取り交わしておく
「死因贈与契約」とは、故人の生前に財産を譲る方(贈与者)と、財産を受け取る方(受贈者)の双方が同意して成立する贈与契約のことです。
書面による取り交わしがなくても、双方の同意さえあれば契約は成立しますが、相続時に揉め事を起こさないためには、書面を取り交わしておくことが大切です。
書面による証拠がないと、他の相続人に対して契約の立証を示せないので、しっかりと書面での取り交わしを行っておきましょう。

□まとめ
口約束による相続は法的な効力を持ち、原則として有効です。
しかし、口約束による相続があったことを証明できないと、相続人同士の間でトラブルに発展してしまうリスクがあります。
そのため、故人の生前に「遺言書」や「死因贈与契約」による証拠をしっかりと残し、トラブルなく相続できる状態にしておきましょう。