サブリース物件の売却は、一般的な不動産売却とは異なる複雑な手続きを伴います。
安定した家賃収入を得られる一方で、契約解除の難しさや売却価格への影響など、多くの課題が存在します。
特に、サブリース契約の解約には「正当事由」が必要となることが多く、売却をスムーズに進めるためには、契約内容の精査や専門家への相談が不可欠です。
今回は、サブリース物件売却の現状と課題、そして成功へのステップを解説します。
サブリース物件売却の現状と課題
サブリース物件売却の困難さ
サブリース物件の売却は、一般の不動産売却に比べて困難です。
その理由は、サブリース契約が長期にわたる場合が多く、オーナー単独では解約が難しい点にあります。
サブリース契約は、借地借家法の適用を受け、解約には「正当事由」が必要となるためです。
売却を希望するオーナーは、サブリース会社との交渉や、場合によっては裁判という選択肢も迫られる可能性があります。
さらに、サブリース物件は、サブリース会社から支払われる保証賃料に基づいて価格が算出されるため、市場価格よりも低い査定額となるケースも少なくありません。
これにより、売却価格が希望額を下回る可能性も高まります。
売却価格への影響
サブリース契約は、売却価格に大きく影響します。
サブリース会社から支払われる保証賃料は、市場価格よりも低いことが多いです。
そのため、収益還元法による査定では、一般の賃貸物件よりも低い価格が算出される可能性が高いです。
また、サブリース契約が継続されたまま売却される場合、購入希望者は、サブリース契約という制約を考慮し、価格交渉を行う可能性があります。
サブリース契約を解除して売却する場合、解除に伴う違約金が発生する可能性があることも、売却価格に影響を与える要因となります。
サブリース契約解約の難しさ
サブリース契約の解約は容易ではありません。
借地借家法により、オーナー側からの解約には「正当事由」が必要となります。
「売却したい」という理由だけでは、通常は正当事由として認められません。
正当事由として認められる事例としては、建物の老朽化による建て替え、オーナー自身の居住の必要性、サブリース会社の重大な契約違反などが挙げられます。
正当事由がない場合、サブリース会社との交渉により解約を目指すことになりますが、交渉が難航する可能性もあります。
交渉がまとまらない場合は、裁判という手段も考えられますが、費用や時間、そして勝訴の保証もないことを考慮する必要があります。
サブリース新法のポイント
2020年に施行されたサブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)は、サブリース契約における不透明な点やトラブルを軽減することを目的としています。
具体的には、誇大広告の禁止、不当な勧誘行為の禁止、特定賃貸借契約締結前の重要事項説明などが義務付けられました。
この法律によって、サブリース契約に関する情報開示が徹底され、契約時のトラブルが減少することが期待されています。
しかし、サブリース契約の解約に関する規定は、この法律によって大きく変更されたわけではありません。

サブリース物件売却 成功へのステップ
契約書の徹底的な確認
サブリース物件売却を成功させるためには、まず契約書の徹底的な確認が重要です。
契約書には、解約に関する条項、違約金に関する条項、保証賃料の見直しに関する条項などが記載されています。
これらの条項を詳細に確認することで、売却戦略を立てる上で重要な情報を得ることができます。
特に、解約条項には、解約の条件、手続き、違約金などが記載されているため、入念な確認が必要です。
専門家(弁護士など)に相談し、契約内容を正確に理解することが重要です。
サブリース会社との交渉戦略
サブリース契約を解約するには、サブリース会社との交渉が不可欠です。
交渉にあたっては、冷静かつ丁寧に、売却の意向を伝え、解約の条件について協議することが重要です。
交渉が難航する可能性を考慮し、専門家(弁護士など)に相談しながら、交渉を進めることをお勧めします。
交渉の際には、契約書の内容を根拠に、正当性を主張することが重要です。
また、交渉が長期化する可能性も考慮し、時間的な余裕を持つことも必要です。
専門家への相談の重要性:弁護士・不動産会社
サブリース物件の売却は、専門家のサポートが非常に重要です。
弁護士は、契約書の内容解釈、解約交渉、裁判対応などの法的側面をサポートします。
不動産会社は、市場価格の査定、売却戦略の立案、買主との交渉などをサポートします。
専門家の的確なアドバイスを得ることで、売却をスムーズに進め、リスクを最小限に抑えることが期待できます。
売却時期の検討
サブリース物件の売却時期も重要な要素です。
不動産市場の動向を分析し、売却価格が高くなる時期を見極める必要があります。
一般的に、不動産市場が活発化する時期(例:春)は売却に有利な時期と言われています。
しかし、物件の特性や市場状況によって最適な時期は異なりますので、不動産会社などに相談し、最適な時期を判断することが重要です。
売却方法の選択:サブリース継続or解約
サブリース物件の売却方法は、サブリース契約を継続したまま売却するか、解約してから売却するかの2つの選択肢があります。
サブリース契約を継続したまま売却する場合は、売却価格が低くなる可能性があります。
一方、解約してから売却する場合は、解約手続きに時間と費用がかかりますが、より高い価格で売却できる可能性があります。
どちらの方法を選択するかは、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、状況に応じて判断する必要があります。
トラブル発生時の対処法
サブリース物件の売却においては、様々なトラブルが発生する可能性があります。
サブリース会社との交渉が難航する、買主との間でトラブルが発生する、売却価格が低くなるなど、想定外の事態に備えておく必要があります。
トラブルが発生した場合には、冷静に対処し、専門家(弁護士、不動産会社など)に相談することが重要です。

まとめ
サブリース物件の売却は、契約の複雑さや解約の困難さなど、多くの課題を伴います。
しかし、契約内容の精査、サブリース会社との交渉、専門家への相談を適切に行うことで、売却を成功させることができます。
売却価格への影響を考慮し、サブリース契約を継続するか解約するか、売却時期などを慎重に検討する必要があります。
専門家のサポートを得ながら、売却戦略を立て、スムーズな売却を目指しましょう。
売却を検討する際には、契約書を十分に理解し、必要に応じて弁護士や不動産会社などの専門家に相談することを強くお勧めします。
サブリース新法の理解も、契約交渉を進める上で役立つでしょう。
早めの準備と的確な対応が、売却成功の鍵となります。