相続放棄後の家はどうなる?放置リスクと処分方法を解説

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相続放棄後の家はどうなる?放置リスクと処分方法を解説

相続放棄という決断は、複雑な財産関係に終止符を打つための重要な手続きです。
しかし、その対象に家屋が含まれる場合、相続放棄をしたからといって、その後の「家」の扱いや、それに伴う責任から完全に解放されるわけではありません。
長年住み慣れた、あるいは思い出の詰まった家をどのように管理し、処分していくのか、その不明瞭さが新たな不安の種となることも少なくありません。
所有権を放棄したとはいえ、物理的な存在としての家が残る以上、予期せぬ管理義務や金銭的負担が発生しないか、そして、もし問題が起きた際にどのように対処すべきか、具体的な道筋を知っておくことは、将来的なトラブルを回避するために不可欠です。

相続放棄した家の放置リスクと責任

相続放棄の手続きを終えたとしても、放棄した家屋の管理責任から完全に免れるわけではありません。
民法上、相続財産管理人が選任されるまでの間、相続財産を管理する義務が生じることがあります。
特に、空き家となった家屋が老朽化し、倒壊の危険性がある場合や、近隣に損害を与える可能性が考えられる場合、所有者不在であっても、その家屋の占有者として、あるいは相続財産管理人選任までの管理者として、一定の管理義務や、発生した損害に対する賠償責任を問われる可能性が否定できません。
不法占拠され、犯罪の温床となったり、第三者に損害を与えたりした場合、その責任の所在が問題となることもあります。

家屋が著しく老朽化し、周囲に危険を及ぼす状態にあると判断された場合、行政が介入して家屋の解体を行う「行政代執行」が実施されることがあります。
この際、解体にかかった費用は、最終的に相続財産から徴収されることになりますが、相続財産が不足している場合や、相続人が特定できない場合には、相続放棄をした相続人に対して費用が請求されるケースも存在します。
また、相続財産管理人が選任された場合、その管理人の報酬や、裁判所に納付する予納金といった費用を、相続放棄した相続人が立て替えるよう求められることもあります。
これらの予期せぬ金銭的負担は、多額に及ぶ可能性があり、相続放棄の本来の意図とは異なる結果を招きかねません。

相続放棄後の家を処分する方法と手続き

相続財産管理人が選任されることで、相続放棄した相続人が直接、家屋の処分に関する実務を行う必要がなくなります。
相続財産管理人は、家庭裁判所への申し立てによって選任され、選任後は相続財産(家屋を含む)の調査、保存、管理、そして換価(売却など)や配当といった一切の権限と義務を負います。
管理人は、家屋の売却や解体といった処分を進め、その結果得られた代金を債権者に分配する役割を担います。
これにより、相続放棄した相続人は、家屋の維持管理や処分に関する直接的な負担から解放されることになります。

家屋が特定空家に指定されるなど、著しく危険な状態にあるにもかかわらず、相続財産管理人が選任されていなかったり、管理人が適切に処分を進めなかったりする場合、行政が代執行によって家屋の解体を行うことがあります。
この行政代執行にかかった費用は、原則として相続財産から回収されますが、相続財産に十分な資産がなく、かつ代執行の法的根拠に基づき、相続放棄した相続人に対して費用負担が求められるケースも生じ得ます。
放置し続けることで、自身が予期せぬ形で金銭的負担を強いられるリスクがあるため、早期の対応が賢明です。

家屋の処分にかかる費用と期間は、ケースバイケースで大きく変動します。
相続財産管理人の選任には、申立費用、官報公告費用、そして管理人の報酬として数십万円から百万円以上の予納金が必要となる場合が多く、これは相続財産の価額や件数によって増減します。
家屋の解体費用も、建物の構造、延床面積、立地条件、アスベスト含有の有無などによって大きく異なり、一般的な木造家屋で数百万円程度、鉄骨造やRC造ではさらに高額になることが想定されます。
また、相続財産管理人選任から家屋の売却・解体、最終的な配当完了までには、事案の複雑さにもよりますが、数ヶ月から数年を要することもあります。

まとめ

相続放棄をした後でも、家屋の管理責任や、老朽化による損害、行政代執行に伴う費用負担などが、放棄した相続人に及ぶ可能性があります。
このようなリスクを回避し、家屋を適切に処分するためには、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる方法が一般的です。
管理人が選任されれば、家屋の管理・処分は管理人が行い、相続放棄した相続人の直接的な負担は軽減されます。
しかし、これらの手続きには予納金や解体費用といった金銭的な負担が伴い、処分完了までには一定の期間を要することも理解しておく必要があります。
相続放棄という決断をした後も、家屋に関する責任が生じる可能性があることを認識し、専門家とも相談しながら、速やかに適切な対応を取ることが重要です。

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