相続登記を放置するリスクとは?放置し続けると起こる深刻な問題

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相続登記を放置するリスクとは?放置し続けると起こる深刻な問題

相続した不動産の名義変更、つまり相続登記の手続きを先延ばしにしていませんか。
登記が完了していない不動産は、いざという時に自由な処分ができず、経済的な機会損失に繋がるだけでなく、予期せぬ税負担の増加や、関係者間での思わぬ対立を生む原因ともなり得ます。
時には、権利関係が複雑化し、本来は容易に解決できるはずの問題が、時間とともに手に負えないほど深刻化してしまうことも少なくありません。
こうした放置がもたらす具体的なリスクとそのメカニズムを理解することは、将来の財産承継を円滑に進める上で不可欠と言えるでしょう。

相続登記を放置するリスク

不動産の売却や担保設定ができなくなる

相続登記が未了の不動産においては、法的な所有権が亡くなった被相続人の名義のまま登記簿上に残存しています。
そのため、もしその不動産を第三者に売却しようとする場合、買主は登記簿上の所有者である被相続人から直接、所有権移転登記を受けることができません。
買主が求めるのは、現存する相続人への相続登記を経由した、買主への所有権移転登記であり、この過程を経ない限り、売買契約の履行は完了しません。
また、金融機関が不動産を担保とした融資を実行する際にも、原則として登記簿上の所有権が明確になっていることを求めます。
相続登記が未了であるということは、不動産を売却して現金化したり、事業資金や住宅ローンのための担保として活用したりする機会を失うことを意味します。

固定資産税の負担が増加する可能性がある

固定資産税は、毎年1月1日時点における不動産の登記簿上の所有者に対して課税される地方税です。
相続登記が長期間行われず、被相続人の名義のままになっている場合、本来であれば相続人全員が連帯して納税義務を負うことになります。
しかし、市区町村は登記簿上の所有者が死亡しているため、直ちに正確な納税義務者を把握することが困難となります。
このような状況下では、地方税法に基づき、市区町村長が登記簿上の相続人の中から一人を「相続人代表者」として指定し、その者に対して納税通知を送付することがあります。
この指定された代表相続人は、他の相続人らとの具体的な負担割合や納付方法について協議が成立していなくても、単独で固定資産税全額の納付義務を負うことになり、思わぬ経済的負担を強いられる可能性があります。
さらに、土地の利用状況によっては、小規模住宅用地に対する固定資産税の軽減措置などの特例措置が適用されなくなるケースも考えられ、結果として税額が想定以上に増加する事態も起こり得ます。

相続人同士のトラブルにつながりやすい

相続登記を長期間放置すると、不動産の権利関係が曖昧な状態が継続することになり、これが相続人同士の間に軋轢を生む土壌となり得ます。
時間が経過するにつれて、当初の相続人たちの事情が変化したり、新たに二次相続が発生して相続人の数が増加したりすると、不動産の利用方法や管理、そして最終的な売却や分割に関する全員の合意形成が極めて困難になります。
一部の相続人にとっては、利用も処分もできない「塩漬け資産」となり、固定資産税や管理費用といった維持コストの負担だけが重くのしかかる状況が生じかねません。
このような不公平感や、誰がどのように責任を負うのかという不明確さが、相続人間のコミュニケーションを阻害し、感情的な対立や法的な紛争へと発展するリスクを高めるのです。

相続登記を放置し続けると問題はどう深刻化する

権利関係が複雑化し手続きが困難になる

相続登記が放置される期間が長引けば長引くほど、不動産を巡る権利関係は飛躍的に複雑化していきます。
最初の相続が発生した時点では数人だった相続人も、その相続人たちがそれぞれ亡くなり、さらに次の世代へと相続が繰り返される(二次相続、三次相続…)ことで、不動産の所有権を主張できる相続人の数は指数関数的に増加していく可能性があります。
例えば、亡くなった親から不動産を相続した兄弟姉妹が3人いたとしても、その兄弟姉妹それぞれに子供が複数人いれば、登記上の権利者は一気に10人以上、あるいはそれ以上に膨れ上がることも珍しくありません。
このような状況下では、不動産を売却したり、遺産分割協議を成立させたりするために、関係者全員の戸籍の確認や、全員からの実印・印鑑証明書付きの同意を取り付ける必要が生じます。
多数の関係者一人ひとりの意思を正確に確認し、全員の合意を得ることは、物理的にも時間的にも極めて困難な作業となり、手続きの遂行を事実上不可能にするほど複雑化させてしまうのです。

必要書類の収集が難しくなる

相続登記の手続きにおいては、亡くなった被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍といった一連の身分関係を証明する書類や、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書など、多岐にわたる公的書類の提出が法的に求められます。
これらの公的書類は、発行・管理する市区町村役場や法務局に保存期間が定められており、一般的には出生から死亡までの戸籍謄本は150年間、改製原戸籍は120年間など、比較的長期にわたって保存されています。
しかし、相続が発生してから数十年、あるいは数世代にわたって相続登記を放置した場合、特に古い時代の戸籍謄本などでは、役所の記録保存期間が経過し、既に廃棄されてしまっている可能性が考えられます。
また、相続人が転居を繰り返していたり、戸籍の附票の保存期間が経過していたりすると、現住所の確認や、過去の住所履歴の証明といった書類の取得も困難になることがあります。
本来必要とされる書類が取得できないという事態は、相続登記を進める上での致命的な障害となり、手続きの遅延や断念を余儀なくされる原因となります。

遺産分割協議がまとまりにくくなる

不動産の相続登記を放置し、権利関係が著しく複雑化・不明確化した状態が続くと、本来は相続人間で円滑に進められるべき遺産分割協議が、時間とともに極めて困難なものへと変貌していきます。
当初の相続人たちが健在なうちは、被相続人への思いや、互いの家族関係から、ある程度の配慮や譲歩が期待できる場面もあります。
しかし、相続が繰り返されることによって、不動産に関する直接的な関与や関係性が薄い、いわゆる「数次相続」の相続人たちが新たに権利者として登場してきます。
こうした新たな権利者たちは、不動産の価値や、それをどのように分けるべきかといった点について、当初の相続人たちとは全く異なる、あるいは利害が対立する主張を展開する可能性があります。
例えば、不動産を売却して現金で公平に分けたいと考える者、不動産を相続してそのまま利用したいと考える者、あるいは不動産の維持管理費用や税金負担について、納得のいく説明や配分がなされない限り協力を拒む者など、多様な利害や思惑が交錯し、全員の合意形成が取れなくなる可能性が非常に高まります。
結果として、遺産分割協議が長期化し、最終的にはまとまらないまま、紛争が泥沼化するリスクを増大させるのです。

まとめ

相続登記を放置すると、不動産の売却や担保設定ができなくなるだけでなく、固定資産税の納税義務が曖昧になり、税負担が増加するリスクが生じます。
時間が経過するほど相続人が増え、権利関係が複雑化・不明確化し、必要書類の収集も困難になります。
こうした状況は、相続人間のコミュニケーションを阻害し、遺産分割協議の長期化や、関係悪化といった深刻なトラブルへと発展する可能性を高めます。
相続財産を円滑に次世代へ引き継ぎ、潜在的なリスクを回避するためには、相続発生後速やかに相続登記手続きを行うことが肝要です。

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